岩田昌征の執筆一覧

マルクスの五感論、軍楽隊・軍歌、そして邦楽の運命――マルクス哲学者田上孝一と音楽史家千葉優子――

著者: 岩田昌征

 田上孝一氏は、自著『これからの社会主義入門 環境の世紀における批判的マルクス主義』(あけび書房、2023年)において、若きマルクスの定言「五感の形成はこれまでの全世界史の一つの事業である。」(『経済学・哲学草稿』)を完

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『叛乱論』東大集会で知る思想の誕生――21世紀の思想とは何か――

著者: 岩田昌征

 1月12日(土)午後、東京大学本郷の大教室で長崎浩氏の『叛乱論』をめぐって四人の論者が自論を開示する討論集会が開かれた。大教室が満杯であった。大学で授業と試験を通して影響を与えた訳でもなく、人気テレビ討論番組の常連であ

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「吉本」と「三島・森田」の両集会で感じた(大)事――露烏戦争の空気の中で――

著者: 岩田昌征

 11月23日(土)、超満員の集会「いま、吉本隆明を問う」に参加した。  集会のテーマの本筋ではない二つの軽い発言が気になった。現在進行中の露シア烏クライナ戦争に触れて、評論家甲氏は、プーチンとトランプの名を挙げたが、バ

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2000年4月NATOシナリオ:露烏戦争の起源――「あるシナリオが文字通り遂行されたのは稀なことである。」

著者: 岩田昌征

 露シア烏クライナ戦争の現状認識に関して、素人にとって、電子画面に毎週登場する“BOGDAN in Ukraina”と「ニキータ伝」が役に立つ。前者はキーウ(キエフ)のウクライナ人による、後者はモスクワ在住の日本人による

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9.14ちきゅう座主催 第5回「現代史研究会」の報告

著者: ちきゅう座事務局

相変わらずの酷暑(残暑)の中、以下の要領での第5回目現代史研究会を行いました。場所が、いつもの本郷界隈やお茶の水界隈と違うため、少し迷った方もいたかもしれませんが、それでも15人の熱心なご参加がありました。 演題(仮題)

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国連総会スレブレニツァ「ジェノサイド決議」

著者: 岩田昌征

 2024年5月23日、国連総会においてドイツとルアンダによって作成された決議案が採択された。それは、旧ユーゴスラヴィアのボスニア・ヘルツェゴヴィナのスレブレニツァ地域で1995年7月11日に行われたセルビア人軍によるボ

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9.14 現代史研究会(ちきゅう座)のご案内

著者: ちきゅう座事務局

日時:9月14日(土) 午後1時30分から5時まで 演題(仮題)「ウクライナ戦争と東欧諸国の動き」 講師:岩田昌征(千葉大学名誉教授) 司会:土田 修(ル・モンド・ディプロマティーク日本語版編集員、ジャーナリスト・元東京

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ゾルゲ事件と漢学者の決断――熊谷直実、松王丸、政岡の伝統美学を拒否――

著者: 岩田昌征

 『山崎洋仕事集』(西田書店、2023年)を再読した。603ページの大著である。山崎洋の主要業績、すなわちセルビア諸古典の邦訳と日本諸古典のセルビア語訳以外の諸主要文章を収録した書物である。  本書は、  第一部 自主管

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沖縄米軍基地本土引き取り論によせて

著者: 岩田昌征

 5月26日(日)ちきゅう座主催の討論集会が明治大学自由塔で開かれ、高橋哲哉氏(東大名誉教授)による沖縄米軍基地本土引き取り論を拝聴した。筋道のしっかりした問題提起、何よりも運動論の底にあるはずの原理と気構えを示された。

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侵略された国に世界大戦覚悟で武器を送りたがる「狂人達」はどちらに多くいるのか――北米西欧市民社会か露国権威主義社会か――

著者: 岩田昌征

 前回の小文で、1999年3月24日から6月10日の新ユーゴスラヴィア(セルビア)へのNATO侵略に対する防衛戦争を終結させる外交におけるロシア元首相チェルノムイルジンの衝撃的パフォーマンスを紹介した。ここでは、ロシアか

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戦争の行方を決めた二つの発言――イギリス首相とロシア首相の衝撃的対面外交――

著者: 岩田昌征

 露烏戦争がNATO露西亜戦争に完全転化したようだ。双方とも核をバックにした通常戦争にとどまっているが……。核の恐怖が停戦・休戦への動機となる事に期待するしかない。  冷戦終焉以後NATOが全面登場した最初の本格的戦争は

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軍隊に労組は必要か否か――セルビアにおける国防省対軍人兵士労組の衝突と弾圧――

著者: 岩田昌征

 東南欧のバルカン半島の国セルビアでは、伝統的に親ロシア感情が強いが、親NATO感情は1999年のNATO19ヶ国の大空爆の結果弱いとはいえ、親北米西欧の志向は決して弱くない。  後者を代表する週刊誌が『ヴレーメ』Vre

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「歌会始の儀」の題「和」と戦争――戦争に向き合う「和」と戦争を素通りする「和」――

著者: 岩田昌征

 今年の「歌会始の儀」の歌題は「和」であった。「朝日」朝刊(1月20日)に発表された天皇、皇后、皇族、選者、入選者二七人・二七首を読むと、「和」字を様々な含意で詠み込んでいるが、圧倒的多数は、詠み人の個人生活に即して発現

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露(シア)・烏(クライナ)戦争即時停戦初詣祈願――上野東照宮の現在的意味――

著者: 岩田昌征

 平成8年・1996年の正月に私=岩田はこんな歌を詠んでいた。    こぞの新春(はる)    明治の杜の神前(かんまえ)に    いのりしことのなりにけるかも    ボスニアの    元和偃武(げんなえんぶ)を思うかな

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安全きれいなアルプス処理水をわざわざ汚して海洋放出する謎――識者に問ふ――

著者: 岩田昌征

 米英仏日韓等22ヶ国が「世界全体の原発設備容量を2050年までに三倍に増す」との宣言を発したと言う(『朝日』朝刊、12月3日)。炭素燃料発電による温室効果ガス増大を阻止する為だとされる。  しかしながら、原発事故発生件

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市民の無意識としての憲法九条と日米安保条約のワンセット

著者: 岩田昌征

 柄谷行人著『憲法の無意識』(岩波新書、2016年・平成28年)「1 憲法の意識から無意識へ」によれば、占領軍の命令で出来た「憲法九条が執拗に残ってきたのは、それを人々が意識的に守ってきたからではありません。もしそうであ

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セルビア大統領ヴゥチチの国連総会演説(平和は禁句となった)――ハレとケ、ケガレとハレバレ――

著者: 岩田昌征

 9月24日、矢沢国光氏の主宰する世界資本主義フォーラムの企画電子会議で、指導的なアメリカ研究者が「大国小国の対等性が保証されている国連の精神・理念を大切にすべきだ。」と突然のように語り出した。私=岩田が「日本人の思想的

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F16コソヴォ・アルバニア人一般住民を75人爆殺――露の戦争犯罪を糾弾するも米英独仏伊の戦争犯罪を不問にして来た我等が不条理市民社会

著者: 岩田昌征

 私の手元に、NATOとユーゴスラヴィア(セルビアとモンテネグロから成る連邦国家)の戦争(1999年3月24日-6月10日)における、ユーゴスラヴィア側が主張する人的・物的犠牲に関する記録本(英文)が三冊ある。  NAT

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クリントン戦争とプーチン戦争の相似形――両戦争の終結様式に相似形ありやなしや

著者: 岩田昌征

 露烏戦争は近現代ヨーロッパにおける国民国家・民族国家体制確立戦争の最終段階のように思われる。  ①南欧におけるスペインとポルトガルの国民(民族)国家成立、  ②西欧におけるオランダ、フランス、ベルギー、イタリアの国民(

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オランダ王国空軍、クラスター爆弾、常民14人殺害

著者: 岩田昌征

 『朝日新聞』(夕、8月21日)に、オランダがF16戦闘機をウクライナに供給するとの報道があった。そしてかなり以前にアメリカがクラスター爆弾を、ウクライナに供給していた。F16もクラスター爆弾も戦場でのみ使用される事にな

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露シア烏クライナ戦争――兄弟殺しと腐敗、もう厭だ。先ずは撃ち方止め。――

著者: 岩田昌征

 ISF、すなわちIndependent Speach Forum、「独立言論フォーラム」なる電子言論団体がある。そこに安斉育郎氏が詳細なウクライナ情報を毎日提供している。北米西欧日本の市民社会主流メディアの伝えるウクラ

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同性婚公認は社会革命だ――世紀後半はインセスト・タブー(近親相姦禁忌)の部分的解消か――

著者: 岩田昌征

 令和5年6月16日(金)「LGBT理解増進法」が成立した。  5月30日(火)に名古屋地裁が「同性婚認めぬは違憲」判決を下していた。判決要旨に「同性カップルが法律婚による重大な人格的利益を享受することから一切排除されて

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ダム決壊作戦の誘因はどちらの側に強かったか?――「水の武器化」はロシア軍かウクライナ軍か――

著者: 岩田昌征

  『朝日新聞』朝刊6月7日(水)第11面、防衛省防衛研究所研究幹事兵頭慎治氏は、ウクライナのカホウカ・ダム破決壊による大洪水に関して、軍学者らしからぬ評価を下していた。  ――南部へルソン州のカホウカダムでの爆発で下流

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マルクス・エンゲルスが断罪する野蛮と黙認する野蛮――『Karl Marx 一八世紀秘密外交史 ロシア専制の起源』を読んで――

著者: 岩田昌征

 『Karl Marx 一八世紀の秘密外交史 ロシア専制の起源』(石井知章+福本勝清編訳、周雨霏訳、白水社、2023年)は、編訳者の一人石井知章の「あとがき」によれば、「プーチン大統領統治下のロシアで起きたウクライナ戦争

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『カール・マルクス 一八世紀の秘密外交史 ロシア専制の起源』を読む――ルイ一五世官房偽造文書「ピョートル大帝の遺書」を手がかりに――

著者: 岩田昌征

 『Karl Marx 一八世紀の秘密外交史』(白水社、2023年4月)を編訳者の一人石井知章氏から贈られた。感謝。  『一八世紀の秘密外交史』は、1856年から1857年にかけてロンドンの新聞に発表され、また1899年

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紙面に見る小国セルビアの意地――バイデン鉄槌とプーチン鉄床にはさまれて――

著者: 岩田昌征

 ベオグラードの日刊紙『ポリティカ』(2023年2月25日)の第1面と第6面に今日のセルビア社会が示す意地とそれ故に感じる苦痛が如実に現われている。  第1面と第6面の大見出し「何故国際法はセルビアに妥当しないのか」(デ

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映画『アイダよ、何処へ?』を観る(下)/スレブレニツァはアウシュヴィッツか?

著者: 岩田昌征

 この文脈において、わたしの個人的体験を想い起こす。以下にわたしの著書『ユーゴスラヴィア 多民族戦争の情報像 学者の冒険』(御茶の水書房、一九九九年)から関連箇所を引用紹介しよう。 ︱︱八月十三日(日)の午後、……、戦争

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映画『アイダよ、何処へ?』を観る(上)/ボスニア紛争とスレブレニツァ

著者: 岩田昌征

 映画『アイダよ、何処へ?』(原題:QUO VADIS, AIDA?)を観た。一九九五年七月十一日から一週間、ボスニア戦争(一九九二年四月〜一九九五年十一月)最終局面に起こったボスニア・ムスリム人成人男子数千人が侵攻した

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